長沼知子特任助教、小池伸介教授、梶光一名誉教授が「日本哺乳類学会論文賞」を受賞
2021年9月3日
グローバルイノベーション研究院の長沼知子特任助教、小池伸介教授、梶光一名誉教授が、2021年8月30日、「日本哺乳類学会論文賞」を受賞しました。
■受賞名
日本哺乳類学会論文賞(第13回)
■受賞テーマ?題目
Age- and sex-associated differences in the diet of the Asian black bear: importance of hard mast and sika deer
■賞の概要
日本哺乳類学会英文誌「Mammal Study」に掲載された研究論文を対象とし、選考手続きを経て選ばれた優れた研究論文に授けられる。
■選考理由
本研究は、足尾?日光山地に生息するツキノワグマを対象に、10年以上にわたって収集した体毛の窒素および炭素の安定同位体比分析により、ツキノワグマ個体群内の個体ごとの食性の性および年齢による違いと、その違いに影響を及ぼすニホンジカの存在とブナ科堅果類の結実豊凶の影響を評価した研究である。個体ごとの食性の違いは、直接観察が可能な動物では古くから知られ、社会性などが影響することが知られてきた。一方、直接観察が難しく、単独性の動物では研究例が限られる。本研究は、長期の野外研究の中で収集されてきた50頭を超える個体の体毛を対象に、安定同位体比解析という実験室での技術を用いた点は、野生動物の生態研究の今後の発展の方向性を示すうえで意義は大きい。さらに、ブナ科堅果の結実豊凶に応じた食性変化の応答が個体によって違う点や、特にオスの成熟個体でシカの採食割合が高いことは、従来から知られてきたツキノワグマの採食生態の新たな一面を示したといえる。さらに、個体群内での個体ごとの食性変異を明らかにしたことは、ツキノワグマの管理においても個体差の存在を意識しなくてはいけない点を強く示唆するもので、これからのツキノワグマの保全や管理において重要な情報を提供するといえる。以上の理由から、本論文を日本哺乳類学会論文賞候補として推薦する。
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